伊勢といえば「伊勢うどん」を想い浮かべる人が多いのではないでしょうか。実際伊勢に来られた方のほとんどが、好みは別れたとしても一度は「伊勢うどん」を食べて帰られたと思います。
今回はその「伊勢うどん」を少し掘り下げて考えてみたいと思いますので、しばらくお付き合いをしていただきたいと思います。
伊勢うどんの歴史
「伊勢うどん」は江戸時代前からあったと伝えられています。一般的に「うどん」や「蕎麦」が庶民の間に広まったのは、江戸時代以降だったと言われています。それは江戸時代以前には「製粉技術」がそれほど発達していなかったのが理由ではないかと考えられているからです。
当時小麦を製粉して「小麦粉」にするには、小麦を「木臼」や「石臼」で「ついて」いたと考えられています。
しかしそれはとても効率が悪く重労働であったと思います。
そのため多くの労働力や、水車などの動力を利用して製粉していたのではないかと考えられます。そう考えると庶民の力でできる事ではなく、庶民の間でもかなりの「実力者」でないとできない事だと思います。
そのころすでに石臼で小麦を「ひいて」「粉」にする方法はありましたが、回転式の石臼はとても貴重で高価なものであり、とても庶民が買える物ではなかったと言われています。
うどんや蕎麦がようやく庶民の食べ物になったのは、「石臼」(挽き臼)が庶民でも買えるくらいの値段になって、庶民の間に製粉技術が一気に広がったのが要因ではないかと言われています。
石臼はもっぱら時の「実力者」や神社や寺などで、お茶の葉を「抹茶」にするために使われたりしており、特定の人でしか持つことができなかった物だったと言われています。
上の様な理由から、製粉された小麦粉(蕎麦粉)はとても希少価値があるもので、「うどん」や「蕎麦」は特別な時、例えば五穀豊穣を祝う祭やお祝いをするときにふるまわれる、「ハレ」の時の「御馳走」だったのではないかと言われています。
「伊勢うどん」が江戸時代前からあったとするならば、考えた人の中には相当な「実力者」が居たに違いありません。実際のところ「伊勢うどん」を考案したのは「伊勢神宮」の「神楽役人」であったとも伝えられていますし、初めて江戸時代以前に「内宮」の前で「うどん屋」を始めたのもその子孫であったと伝えられています。
例えば、「伊勢うどん」は忙しい農民が農作業の合間に手間をかけずに食べられる物・・と説明されている事がありますが、これは間違っているのではないかと思います。
「伊勢うどん」は長い時間をかけて麺を茹でなければなりませんが、かまどでご飯を炊くのと同じように、その間は常に誰かが火加減を見ていなければならないと思います。
今の様にガスコンロのない時代、とうてい不可能ではないでしょうか。
確かに麺を湯がいて汁をかければ出来上がり、と言えば簡単にできる様に思われますが、そこに至るまでの手間と時間はかかるものだと思います。
私の結論としては、「伊勢うどん」はお祭りの時やお祝いの時、大きな釜でぐつぐつ茹でられ取り分けられて、たまり醤油をかけられて人々に振舞われていたのが起源だったのではないかと思います。それを伊勢神宮にお詣りする人たちの為に工夫し提供したのが始まりだったのではないでしょうか。
ちなみに私が幼い頃は「伊勢うどん」とは言いませんでした。単なる「うどん」と言っていました。「伊勢うどん」という名前が広がったのは1970年ころ、著名な作詞家の方が伊勢を訪れた際初めて「伊勢うどん」を食べて感動し、ラジオ番組の中で紹介したのが始まりだったと言われています。
今から半世紀程前。自分がまだ幼かった頃は祖父や祖母に連れられて、市内にあるお店で「伊勢うどん」を食べさせてもらった記憶がありますが、その頃「伊勢うどん」はまだお店でしか食べる事が出来ませんでした。家で作るには手間がかかったのでしょう。「伊勢うどん」は街に買い物に出かけた時の「外食」のメインだった様に思います。
その後、伊勢の市内などでは「麺」や「汁」がスーパーでも買える様になり、家庭で簡単に食べられる様になりましたが、お店の味をもう一度思い出して食べてみるのも良いと思います。
ずいぶん前置きが長くなってしまいましたが、自分が訪れた店の中で何店かご紹介させていただきます。
おもな伊勢うどんのお店
つたや
河崎商人街にあるお店で、地元の人にも人気です。汁は様々な出汁がきいていて、手間がかけられているのがよくわかります。トッピングの焼き豚も人気です。
伊勢うどん ちとせ
「伊勢うどん」という名前のきっかけになったお店です。文化会館の近くにあり、芸能人や著名人がよく出前を頼む店でもあります。肉うどんはボリュームがあります。
福野屋
勢田川沿いにあるお店です。本当はメニューには無いのですが、肉入りが食べたかったので作ってもらいました。
喜八屋
駅からは少し離れていますが、このお店も人気です。中華そばも美味しい。
まめや
伊勢市駅の北側にあるお店で、観光客の方にも人気のあるお店です。
起矢食堂
宇治山田駅から少し離れた「古市街道」沿いにあります。地元の人にも人気です。
伊勢うどん 中むら
外宮前ほど近くにあるお店。観光客に人気です。写真は伊勢うどんに玉子をからめた「玉子伊勢うどん」です。
多市屋
二見町の旅館街にあるお店です。さざえの炊き込みご飯も美味しい。
つきよみ食堂
国道を挟んで「月読宮」の前にあるお店です。おそらくここの伊勢うどんが一番柔らかいと思います。箸で持ち上げるのも難しいほど。
岡田屋
おはらい町通りにあるお店です。ここの伊勢うどんのタレが一番黒いでしょう。でも見た目ほどは辛くありません。食べるときには注意が必要ですね。
めん処 伊勢屋
伊勢シーパラダイスに併設された「FUTAMI PLAZA」内にあるお店です。ここでは玉子を絡めたものを「釜玉」と呼んでいます。
まとめ
伊勢市内に限らず、「伊勢うどん」を出すお店は沢山ありますが、私も全てをまわった訳ではありません。しかし店ごとに微妙に味が違うのも面白いと思います。いろいろまわってみて、自分好みのお店を探すのも楽しいのではないでしょうか。
伊勢うどんのトッピングもいろいろありますが
トッピングする具材によって、お店毎に呼び方が違うのが気になりました。この辺りも統一してみてはいかがでしょう。
トッピングが多くなると「肉玉子伊勢うどん」とか「肉月見山かけめひび伊勢うどん」とか、どんどん名前が長くなっていく気がします。かといって「ぜんぶのせ伊勢うどん」というのもイメージが沸きにくい。
つまりは「伊勢うどん」にはまだまだ進化の余地があるという事だと思います。
素の「伊勢うどん」では少し物足りないという方もおられるでしょう。いろんなトッピングを工夫して、他の店とコラボすれば面白くて美味しい「伊勢うどん」が出来るかも知れません。伝統や歴史も大切ですが、変化や進化も必要なのだと思います。
伊勢うどん協議会公式サイト
※スタンプラリーは終了しています。
https://www.ise-cci.or.jp/iseudon/
伊勢うどんのお店マップ:Google Map
https://goo.gl/maps/bf7qUCShngweU65s8
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