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伊勢への旅:朝熊山編

 伊勢市の東側に位置する「朝熊山(あさまやま)」は、古くから伊勢の観光名所でした。朝熊山の頂上にある「朝熊山金剛證寺」は神宮の鬼門を守るお寺として、死者の魂が行きつくところとして信仰を集めています。この地方では「たけまいり(朝熊岳参り)」といって、亡くなった人の魂を弔うため「朝熊山金剛證寺」にお参りし、「卒塔婆」をたてる風習が今でも残っています。

信仰の対象としての朝熊山

金剛證寺の駐車場に車を停め、極楽門をくぐり奥之院へと進んで行くと、だんだんと独特の空気に包まれていきます。杉の巨木の間に無数の「卒塔婆(そとうば)」が並んでおり、それはあたかも「高野山奥之院」を思わせる風景です。弘法大使もこのお寺に深くかかわっていたことから、このような風景となったのでしょう。

お参りを済ませ金剛證寺へと向かいます。

お寺の境内には様々な仏様が祀れており、十一面観音菩薩と弘法大使が一緒に祀られています。

また季節ごとに蓮の花や沢山の花が咲き、その様子が「極楽」に例えられ、人々に伝えられているのだと思います。

観光地としての朝熊山

明治以降になると、朝熊山は更に観光地として発展していきました。「お伊勢参らば朝熊をかけよ、朝熊参らば片参り」というキャッチコピーが今でも使われていますが、これがいつの時代に生まれたのか、また誰が作ったかは定かではありません。しかしおそらくは明治以降であったと思われます。

山頂に向かうための登山バスが走り、山頂には旅館もたてられました。

今でも内宮(宇治)から朝熊山に登っていくと、登山バスの名残がところどころに見られます。

この頃から伊勢市やその近郊では「神都」という言葉が盛んに使われ始めていたと思われます。

東京に初めて路面電車が走ったのが明治36年(1903年)8月22日だそうですが、伊勢市で路面電車の「神都線」が運行開始されたのはほぼ同じ時期、東京よりもわずかに17日早く、同じ年の8月5日でした。
たとえ伊勢神宮があるとしても、「地方」の一つの「市」に路面電車を敷設するという事は、国が伊勢市を一大観光地とするために、並々ならぬ力を入れていた証拠ではないでしょうか。
それが昭和に入るまで続き、戦前には「朝熊登山鉄道」が敷設され、当時は「東洋一」の急こう配を誇る「ケーブルカー」とうたわれていました。
こういった歴史を見ると私は、「神都」は国威発揚のための恰好の宣伝の場所ではなかったのか、と思えてなりません。

戦争が近づくと「神都線朝熊登山線」も「朝熊登山鉄道」も廃線になってしまいました。

その後戦争が終わり、復興が進み近代化とモータリゼーションが進んで行く中、朝熊山に観光道路を作ろうという計画が持ち上がりました。

伊勢志摩スカイラインの開通

伊勢志摩スカイラインは1964年(昭和39年)10月に開通しました。開通当時には頂上の展望台に3棟のレストハウスもあり、たくさんの観光客でにぎわっていました。
今はドライブやツーリングの名所として、特に近年では「天空のポスト」など、インスタ映えする撮影スポットとしても有名です。
しかし今も昔も景色は変わらず、頂上の展望台から北の方角を見れば伊勢平野が一望でき、遠く四日市のコンビナート群までうかがえます。また東に目を移せば、鳥羽湾に浮かぶ島々が見渡せます。

また山頂には遊歩道も整備されていて、この日はゴールデンウイークの最終日だったこともあり、つつじの花がとても綺麗でした。

さてここで、伊勢志摩スカイラインには「伊勢(内宮)側」と「鳥羽側」の料金所がありますが、どちらから登れば良いか考えるところだと思います。

私は絶対に「伊勢(内宮)側」から登る事を強くお勧めします

なぜなら、金剛證寺にお参りして、展望台で風景を楽しんでインスタ映えする写真を撮った後、展望台を出て鳥羽側に下り始めると、またとない絶景が見られるからです。
それはまるで鳥羽湾にダイブしていくような感覚です。

左側に駐車スペースがある事から、車好き、バイク好きの方達はここに愛車を停め写真を撮るのが人気となっています。

※事故防止のため、周りの状況をよく見て撮影をしてください。

さて伊勢志摩スカイラインを通り朝熊山展望台に行くにはどうすれば良いかというと、車やバイク、あるいはタクシーで行くしかありません。
しかし不定期ながら近鉄の「五十鈴川駅前」から「浦田町」を経由して「金剛證寺」「山上広苑」バス停まで向かう「参宮バス(スカイラインルート)」も運行されています。
また伊勢志摩スカイラインの公式サイトでは、車やバイクで通行する方たちの為の「割引券」もダウンロードできますので、伊勢志摩スカイラインに行ってみたいと思われる方は、ぜひともチェックしてみてください。

※気候や路面の状況によっては通行止めになる場合もありますので、お出かけ前にはぜひともチェックしてください。

伊勢志摩スカイライン公式サイト

↓ ↓ ↓

https://www.iseshimaskyline.com/

朝熊山登山

さて、朝熊山展望台まで車やバイク、あるいはタクシーやバスで行くという方法をご紹介いたしましたが、せっかくなら自分の足で登ってみたいと考える人も多いと思います。
朝熊山は初心者や子供から高齢者まで、比較的登りやすい山でもあります。しかも交通アクセスも良く手軽に登れる山でもあります。
朝熊山にはたくさんの登山ルートがあって、内宮から登るルート、朝熊町内から登るルート、鳥羽市から登るルートなどがありますが、人気なのは朝熊町内から登る「朝熊岳道(たけみち)」ルートと、内宮(宇治)から登る「宇治岳道」ルートです。
「朝熊岳道(たけみち)」ルートの登山口は「近鉄朝熊駅」から歩いても近く、朝熊駅をスタート地点として山頂まで登られる人が多いと思います。山登りのベテランの方なら日々の練習の場にしている人もたくさんいます。
また「宇治岳道」は始めにご紹介させていただいた昔の「登山バス」のルートそのものであり、交通アクセスもよく、比較的緩やかで、何より「おはらい町」から朝熊山に直接登る事の出来る道でもあります。

私としては、せっかく伊勢に来て朝熊山に登るのなら、行きは「朝熊駅」で降りて「朝熊岳道」を登り頂上で景色を楽しんだ後、帰りは「宇治岳道」を下って「おはらい町」で観光を楽しんで帰る、というルートがおすすめです。
朝熊山に登って、降りたところがおかげ横丁だった、というのはなんとも不思議な体験になると思います。
これは日本でも珍しい観光登山ルートとして、アピールする事もできるのではないかと思います。

朝熊山編まとめ

さて今回は様々な観点から地元の「朝熊山」についてご紹介させていただきました。
私達「伊勢人」にとっては、「朝熊山」は「伊勢神宮」と同じくらい身近にあり、その方角を見れば常に「朝熊山」はそこにあり、自分たちのくらしを見守ってくれていたように思います。

「朝熊山」は私達にとってふるさとの山であり

まさしく私達の魂の山であると思います。

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