伊勢であったテロ事件について。

　安倍元総理が街頭演説中に銃撃され亡くなる、という事件は日本だけではなく世界中を震撼させました。

いかなる理由があろうとも、暴力によって現状を変えのは絶対にやってはならない事で、全ての人の共通認識だと思います。

心より安倍元総理のご冥福をお祈り申し上げます。

事件以降今も捜査は続いており、事件の全容についてはまだまだわからない事もたくさんありますが、警備・警護体制に不備なところがあったのではないか、という報道もたくさん聞かれます。
実際事件の動画が流される度に、素人目にもわかるくらい演説者の背後が「ガラ空き」なのがよくわかります。警備をしていた警察官がどれくらいいたのかは、銃撃後に一斉に犯人に飛びかかろうとしていた捜査員の人数で分かります。それだけの人数がいれば誰か一人でも犯人に気付き制止したり、元総理を守る事も出来たのではないかと思うと残念でなりません。しかし警察は警備・警護や犯罪抑止が専門ではなく、犯人を捕まえるのが唯一本業なのかと思えてなりません。

もう一つ気になった事がありました。
元総理が演説する前、警備・警護する人たちに緊張感が足りない様に見て取れました。まるで芸能人を迎え入れる様な雰囲気ではなかったのかと想像します。
選挙期間中は一般の人達と政治家が直接触れ合える貴重な時間であり、政治家もその時間を大切にしているのは良くわかります。警備や警護に神経質になれば、こういった触れ合う機会も無くなってしまうでしょう。しかし警察としてもそこに「油断」があったのではないでしょうか。

まさか「銃撃」など起こらないだろう。

これだけ「警備」していれば、誰も近付けないだろう。

人間は都合の良い方向に考えるもので、そういった「油断」は絶対にあったと思います。

まさかここ（日本）でこんな大事件が起こるなんて、考えた事も無かった。

と多くの人が思っているのでしょうが、実際日本でも多くのテロ事件があり、それにより何人も亡くなっています。日本はテロや銃撃事件とは無縁の国の様に思いますが、「無かった」のではなく「忘れている」のです。そんな事はそうそう起こる事ではない、と処理してしまっているのです。それは事件や事故に限らず、自然災害にも同じことが言えると思います。

今から３２年前の１９９０年（平成２年）の１１月１８日、伊勢市内で過激派と思われるグループによる爆弾テロ事件が起きました。
昭和天皇が崩御し平成天皇の時代となり、平成天皇が即位の報告をするために伊勢神宮を訪れることになっており、それを狙っての事だと言われています。

午前３時５分頃、すさまじい爆発音と共に火災報知器がけたたましく鳴り響きました。当時宇治山田駅で宿泊していた私たちは驚いて皆飛び起きました。
避難するかどうか話をしていると、すぐに構内放送で「コインロッカーで火災発生」という情報が伝えられてきました。しかしそれ以上の情報は伝わってこず、皆で現場を確認しに行く事にしました。
しかしこの行動に問題であったのは後に知る事となります。

コインロッカー室に向かうと火の勢いがすさまじく、自然に発火したものでない事がすぐにわかりました。たまたま居た作業員が危険を顧みず窓を蹴破りその間から消火器を入れて消化をすると、次第に火の勢いも無くなっていきました。

少し安心して、再び宿泊所に戻って仮眠をとる事にしましたが、その前にトイレに寄る事にしました。思わぬ時間に起こされて、とりあえずトイレに寄ってから眠ろうと思ったのです。

再び床に就き眠ろうとしたその時、再び構内放送が鳴り響きました。

「総員避難せよ！構内から直ちに避難せよ！」

今度はいったい何が起こったのだ・・とにかくこれは尋常な事ではない。布団から飛び起き着替えてすぐに駅の構外に出ると、駅のロータリにはおびただしい数の警察車両が回転灯を点けて停まっていました。
警察官に誘導され、伊勢市観光文化会館（当時）の前まで避難しました。

「不発弾が見つかったらしいんだ。」

どうやらそのために避難命令が出たらしいが、それがあった場所を聞いて驚きました。

「トイレの用具入れに仕掛けてあったらしい。」

それはまさしく自分が寄ったトイレでした。

思わず顔面が蒼白になり、ブルブルと体が震えました。

もしその爆弾が爆発していれば死んでいたかも知れない。死なないまでも炎に焼かれて重傷を負っていたかも知れない。

このテロが恐ろしいのは、特定の人物や団体を狙ったものではなく、無差別テロであるところだと思います。全く無関係な人でも、テロの対象となるところです。

１９９０年だけで１４３件の爆破・放火・迫撃砲によるテロ事件があったと記録に残されており、警察官や一般市民も犠牲になっています。そういった組織によるテロだけでなく、以前宗教団体が起こしたテロ事件があった事を覚えている人も多いと思います。
また個人による大量虐殺事件もこれまでに何度もありました。

戦争や暗殺事件。今また極めて不安定な時代に差し掛かっているのではないかと思います。

日本は「安全」はお金を出さなくても買える。

と思っている人がほとんどだと思いますが、少なくとも、いつどこでどんなことが起こるのかは全く分からない。という事は常に考えておいた方が良いと思います。

寅寅寅